• 2025.10.02
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【グレーターミナミTRAIN】南出市長が描く「食と人で育むまち」泉大津から南大阪の未来へ

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毛布のまち・泉大津。勇壮なだんじり祭の熱気と、人を受け入れる風土に息づくこのまちは、いま若者に選ばれるまちへと歩みを進めています。今回は、そんな泉大津市の南出市長インタビュー後編。市長が提唱する「食」を軸にした7世代先を見据えた健康や暮らしのあり方をはじめ、泉大津の現在と未来を紐解きます。

目次

南大阪首長リレー Vol.2|泉大津市 南出市長インタビュー後編

食と人がまちを育てる。泉大津から広がる希望の連携

南大阪の自治体同士が地域の魅力と未来への展望を語り合う連載企画「南大阪首長リレー」。第2回は泉大津市・南出賢一市長が登場。関西国際空港との連携を軸に、泉州の観光戦略、オーガニック農業による食のまちづくり、移住者との共創、そして地域に根ざす人の温もりまで——泉大津の現在と未来を、つくも株式会社CEO石川氏(元関西エアポートオペレーションサービス代表取締役社長)との対話を通じて、前後編の2回に分けて紐解きます。地域の可能性を育む“食”と“人”の力に、今、光が差し込んでいます。

前回の記事はこちら




若者が選ぶまちへ…移住者との共創

泉大津市では、市長の理念に共鳴し、移住者が増えてきています。


石川氏:昭和町にオープンした「PINE PLACE MARKET(パインプレイスマーケット)」は、泉大津に移住された方が南出市長の考えに共感し、地域に根ざした食と空間を創造した場所だと聞いています。このような移住者による地域活性の動きについて、どのように受け止めておられますか?市として、今後どのような形でこうした取り組みを支援・連携していきたいとお考えですか?

南出市長:移住者が泉大津の価値を見出し、共にまちづくりを進めてくれることは本当にありがたい。若い世代が選ぶまちになってきています。東洋経済の調査によると、泉大津市は25〜39歳の若者人口増加率で全国29位にランクイン。なんと人気の姫路は30位で泉大津市が抜いたんです。これは、ただ住むだけでなく、泉大津市の理念に共感して移り住んでくれる人が増えていると捉えています。


石川氏:市長のお言葉から、泉大津市が“共感による移住”という新しい価値軸で若者に選ばれていることがよく伝わってきました。PINE PLACE MARKETのような場が、地域の理念と個人の想いをつなぐハブとなり、まちの未来を共に描くきっかけになっているのだと思います。今後も、移住者の視点や創造力が地域に根づくような支援のあり方を、市民とともに模索していければと感じています。



だんじりのまちに息づく、受け入れる力

勇壮なだんじり祭りで知られるまち。祭りの熱気とともに育まれてきたのは、外から来た人を自然に受け入れる風土のよう。市長は、職員や市民と共にまちづくりを進めてこられました。その姿勢が、地域の信頼と共感を生んでいます。


石川氏:泉大津といえば、勇壮なだんじり祭りが印象的です。市長ご自身はこの祭りをどのように捉えておられますか?地域にとって、だんじりとはどんな存在でしょうか?


南出市長:泉州の人たちは、よそ者をよそ者として扱わない。だんじりのような伝統文化も、閉鎖的ではなく、関係ができれば自然と輪に入れてくれる。そういう地域性が泉大津の魅力です。


泉大津濱八町 上之町の威勢よく曳かれるだんじり。勇壮なだんじりは外からの人も包み込む。開かれた文化が泉大津の魅力。



未来へのまなざしのバトン

南出市長に「南大阪首長リレー」のバトンを渡してもらいます。


石川氏: 最後に、「南大阪首長リレー」の次のバトンを渡す首長をどなたに指名されますか?その方を選ばれた理由や、今後の南大阪地域の連携に期待することがあれば、ぜひお聞かせください。


南出市長:河内長野市の西野市長にバトンを渡したいと思います。広く南大阪の魅力を次世代に繋げていくために、高野沿線との連携は大切です。是非、西野市長に南大阪の未来をインタビューしてください。

南出市長が育んでいる「食を通した生き方」。このリーダーシップが、南大阪というエリアに確かな希望を灯している。食べることは、生き方を選ぶこと。泉大津の食卓には、未来の暮らしを見つけるヒントが並んでいます。
千代松市長のバトンを感じながら南出市長の言葉に耳を傾け、この南大阪首長リレー、次は南出市長からのバトンタッチは、河内長野市西野市長へとつながっていく。その広がりが、ますます楽しみです。

さて、ここからは、南出市長のお話にも出てきた「PINE PLACE MARKET」と「泉大津のだんじり」そして、今回ご協力いただいた「泉大津市役所の職員さん」についてご紹介します。

7世代先の健康を思う「食」のセレクトショップ&カフェ


南海本線「泉大津駅」の近く、黄色い看板が目印



泉大津駅から徒歩約8分、富田林泉大津線沿いに佇む「PINE PLACE MARKET(パインプレイスマーケット)」。沖縄出身の姉妹が東京都と堺市から泉大津市に移り住み、「7世代先を想う、食のセレクショップ&カフェ」をコンセプトに、2024年5月にオープンしました。



店内中央にあるキッチンカウンター




「15品目の重ね煮タコライス」(1,390円)にスープ(200円)をセット



店内はオープンキッチンを中心に、全国から厳選した調味料が並ぶセレクトショップエリアと、カフェスペースに分かれています。ショップには、無添加の醤油や味噌、酢などの調味料をはじめ、子どもも安心して食べられる無添加おやつまで、約400種類のアイテムがずらり。
カフェでは、1プレートに15種類以上の野菜が楽しめる「15品目の重ね煮タコライス」(1,390円)をはじめ、「ヴィーガンカオマンガイ」(1,420円)、たっぷり野菜の「PPMベジタコス」(1,320円)、「玄米チキンスープ&サラダ」(1,150円)など、からだに優しいメニューがラインナップ。食材はすべて国産、可能な限りオーガニックのものを使用。
店頭で販売している調味料を使い、マヨネーズやソースは自家製で仕上げるという徹底ぶり。



店舗を運営する、沖縄出身の藤原さん(写真左)と親泊さん(写真右)姉妹。沖縄の太陽のような笑顔で迎えてくれます




セレクトショップ


「子どもの健康のためにどこで開業するか、全国各地を探していました。そんななかで、食育への取り組みに力を入れている泉大津市に魅力を感じ、この地での開業を決めました」と話す親泊さんと藤原さん。今では健康志向の子育てママをはじめ、ヘルシー志向の女性たちが足繫く通う人気スポットになっています。


PINE PLACE MARKET

住 所:大阪府泉大津市昭和町3-30

電話番号:0725-58-8108

営業時間:10:00〜18:00

定 休 日 :日曜

泉大津だんじり祭“かちあい”に宿る魂と、ヒトを包み込むまちの力

泉大津駅を降りて海側へ向かうと、毎年10月、空気が一変する。泉大津市内3地区(濱八町/穴師/曽根・助松)で開催される秋の風物詩「泉大津だんじり祭」。その中でも、濱八町で繰り広げられる「かちあい」は、全国でもここだけと言われる唯一無二の見せ場です。



泉泉大津濱八町 上之町のだんじり


「かちあい」とは、後方から勢いよく走らせただんじりが、前方で静止するだんじりに真正面からぶつかる豪快な技は、子孫繁栄の祈願を意意味したもので、地域の誇りとして受け継がれています。だんじりの迫力はもちろんですが、泉大津の魅力はその奥にある“人の気質”にも宿ります。
南出市長が語られていた「泉州の人たちは、よそ者をよそ者として扱わない。だんじりのような伝統文化も、閉鎖的ではなく、関係ができれば自然と輪に入れてくれる。そういう地域性が泉大津の魅力です。」というお話を実際に、泉大津だんじり濱八町・上之町の中谷圭一さんと大西一生さんに聞いてみました。



泉大津濱八町 上之町のだんじりメンバー


中谷さんは「そうですよ、来るもの拒まずです。ただ、人として大切なことを守れない人は自然と離れていきます。うちの会社は、祭り(だんじり)を通して信頼性の深い仲間達と仕事をしています。祭りで一緒に汗を流した仲間は、仕事でも信頼できる。口約束でも通じるのが泉大津のええところです。だんじりはただの祭りやない。命張って引いてるんです。だからこそ、そこに集まる人間には覚悟がいる。逃げずに向き合う姿勢があれば、年齢も出身も関係ない。そういう人間には、こっちも本気で応えます。」と語り「義理と人情は、泉大津の空気みたいなもんです。誰かが困ってたら、自然と手を差し伸べる。見返りなんていらん。だんじりで育ったからこそ、そういう生き方が染みついてるんです。」
大西さんも笑顔でうなずきながら「だんじりを通して、人の本気が見えるんです。だからこそ、信頼が生まれる。」とおっしゃっていました。

南出市長の言う通りでした。泉大津のだんじりは、ただの祭りではない。地域の絆を深め、よそ者を仲間に変える“受け入れる力”が、ここにはある。気合と温もりが交差するこのまちで、新しいつながりを見つけるには泉大津は楽しい街なのです。

未来を紡ぐのは、人の想い〜泉大津市の職員に触れて〜

これまで泉大津市の取り組みを取材し、2つの記事にまとめてきました。「医食同源・身土不二(しんどふじ)」という理念を軸に、子どもたちの食育から市民の健康、そして地域の農業や食文化とのつながりまで。泉大津のまちづくりは、まさに“食”と“暮らし”を結ぶ挑戦の連続でした。

その中で、もっとも心を動かされたのは、泉大津市職員さんの姿でした。南出市長の想いを「言葉」として受け止め、自分の中で咀嚼し、市民に届けるために汗を流す。職員さんの語る言葉には、理念をただ繰り返すのではなく、“自分の生きた実感”として語る重みがありました。



泉大津市役所の職員さんの食の会議


泉大津市役所の下江隼人さんは「子どもたちに、食べることの大切さを体験から知ってほしい。日本各地の農山村地域と連携し、お米を提供してもらいながら、こども特派員事業でこどもの農業体験の機会を提供し、食育にも力を入れています」と他の職員さんと一緒に笑顔で語られ、その一言には、未来の世代を想う優しさと責任感が込められていました。

泉大津市のまちづくりは、決して施策や制度の枠だけでは語れない。そこには、職員一人ひとりの真心が息づいている。市民と向き合い、子どもたちの未来を見つめながら、日々の仕事に誇りを持って取り組む。その姿に、私は深く感動しました。泉大津は、人の想いで紡がれているまちのようです。市長の理念を灯として、職員がその火を絶やさぬように守り、育て、広げています。



左から谷内恵介さん、下江隼人さん、泉本莉奈さん、檜光優さん



取材の様子はこちら


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