狭山池と高野街道をぶらりと歩く、歴史さんぽ旅
大阪狭山市の象徴「狭山池」は、日本最古のダム式ため池として約1400年もの歴史を重ねてきました。その池のほとりに建つのが、名建築家・安藤忠雄氏が設計を手がけた「大阪府立狭山池博物館」。先人たちの知恵や技術、建築と空間の美に触れる時間は、知的な感動の連続です。そんな時間を過ごした後は、余韻を胸に池周辺のカフェでひと息。お店自慢のメニューを味わいながら、心解く癒やしのひと時を楽しみましょう。
狭山池の最寄り駅は、大阪狭山市駅(なんば駅から約25分)。賑やかな駅前の通りを西へ歩き最初の信号を越えると、所々に古い建物が残るレトロな町並みへと変わります。さらに旧街道をしばらく進めば、狭山池に到着です。
草木の美しさと、整備された歩道、ユニークなフォルムの取水塔など、大規模なため池ならではの堤防上を散策し、池のすぐ北側にある「大阪府立狭山池博物館」へ。池との一体感や水をイメージした外観が、界隈でもひときわ威光と存在感を放っています。この建物を設計したのは、大阪出身の世界的建築家・安藤忠雄。2001(平成13)年の開館以来、まちのランドマークとなっています。
まずは、館外で安藤忠雄建築の世界に浸ってみましょう。外観を眺めた後は、建物の階下へ。そこには水庭が広がり、水の癒やしを感じられます。さらに、決まった時間になると建物の屋根から滝のように水が流れ落ちる「水のカーテン」が出現。毎日9時55分から16時25分までの間で14回、各回約10分間幻想的なひとときを楽しめます。
館内は入ってまず目をひくのが、池から移築された高さ約15m、幅約60mにもわたる堤の断面。ほかにも、江戸時代に造られた木製樋の取水部、国の重要文化財に指定されている奈良時代の木製樋など、時代ごとの貴重な歴史遺産が数多く展示されています。大スケールな展示物を生かした空間設計の素晴らしさにも、驚きと感動を覚えることでしょう。
一角には、安藤忠雄氏が描いた設計図やラフスケッチなども展示。また、館内に併設されている「大阪狭山市立郷土資料館」の図書コーナーには、地史や歴史書のほか安藤忠雄作品に関する本も並んでおり、建築ファンは必見です。
大阪府立狭山池博物館
住所:大阪狭山市池尻中2
TEL:072-367-8891
開館時間:10:00~17:00(入館は~16:30)
定休日:月曜(祝休日の場合は翌日)、年末年始
料金:入館無料
アクセス:大阪狭山市駅から徒歩約12分
池畔の散策と博物館の見学での余韻に浸りながら、ゆったりとカフェ時間を過ごしましょう。今回は、狭山池周辺にあるカフェの中から、ジャンルもスタイルも異なる3店をピックアップして紹介します。
「さやか公園」の向かいにある「自家焙煎工房カフェ littleisland 狭山本店」は、自家焙煎コーヒーの専門店。店先にはコーヒーの豊かな香りがただよい、こっちへおいでと呼んでいるかのよう。コーヒーファンでなくとも、思わず引き寄せられることでしょう。
店内に入ると、より一層コーヒーの香りを感じ、心が癒やされます。豆が入った大きな麻袋や古い焙煎器などがインテリアのように置かれ、雰囲気も満点。壁や天井は焙煎の煙でいぶされ、何ともいえぬ渋い風合いを醸し出しています。
そんなお店を一人で切り盛りするのは、オーナーの小島和也さん。20年以上コーヒーに携わり、以前はよく、世界各地の産地に足を運んで豆を買い付けていたそう。現在は、堺市に菓子工房を備えた支店をもつほか、各支店の店主がオーナーとして独立を目指す移動販売カフェのプロジェクトを展開。コーヒー教室の講師も務める、コーヒーのプロフェッショナルです。
お店では、小島さん自ら厳選した豆を常時12種類そろえ、オーダーごとに一杯分ずつ焙煎して提供しています。おすすめされるまま選んだのは、日本ではここだけでしか扱っていないというバリ島産のピーベリー(丸豆)「リトルアイランドPB」。酸味が少なく香りが立ち、甘みと苦みが絶妙で、後口まで深い味わいを感じます。同じ豆を使った「PBティラミス」との相性も抜群です。
夏場には、エスプレッソベースの「カフェラテ」をアイスで。ガラス体験で手作りしたという大ぶりのグラスの中で、ミルクのふくよかな甘みとコーヒーの香りが溶け合います。後味もスッキリで、贅沢にもゴクゴク飲みたくなる一杯です。
自家焙煎工房カフェ littleisland 狭山本店
住所:大阪狭山市狭山2-944-1
TEL:072-248-6047
営業時間:8:00~18:00(土・日曜、祝日は7:00~)
定休日:不定休
アクセス:大阪狭山市駅から徒歩約6分
狭山池と大阪狭山市駅の間に広がる、狭山2丁目・3丁目界隈。中高野街道と下高野街道が接続し、「さやまはし」という小さな橋がある一帯は、所々に古い建物が残り旧街道の面影が感じられます。そんな「さやまはし」から北へ歩いてすぐの場所にある「時空間 くりや」は、築100年の古民家を改装したくつろぎの空間。できる限り大正時代の造作や意匠を残したという店内は、レトロ感あふれる非日常な世界感を提供しています。
年季の入った梁や柱などに重厚な歴史の重なりを感じながらも、天井が高く開放的です。温かみある木の質感を生かした調度品が並ぶ中、藍染めの座布団や季節の生花が差し色となり、居心地よい空間を創り出しています。
そうした素敵な空間とともに人気を集めているのが、ポトフとパスタの2種類のランチメニューです。1日16食限定の名物「くりやのポトフランチ」をいただきます。メインのポトフ、有機野菜のサラダ、ひじき煮、はんぺんたまご、黒米ごはん、お漬物と盛りだくさん。4種類から選べるポトフのスープは、だし汁を効かせた和風スープに。プラス料金でプチデザートとドリンクがつきます。
ポトフの具材には、しっかりとスープが染み込み、深い味わい。添えられた柚子唐辛子をつけると、グッと味が引き締まり風味豊かになります。
もちろん、カフェだけでの利用もOK。ほんのりラム酒が香る生クリームを添えた「特製シフォンケーキ」や、スペシャルティコーヒーのみをブレンドした「くりやブレンドコーヒー」など、カフェメニューも充実しています。
時空間 くりや
住所:大阪狭山市狭山3-2433-2
TEL:072-360-0007
営業時間:11:00~14:30、15:00~18:00(17:00LO)
定休日:月曜
アクセス:大阪狭山市駅から徒歩約4分
狭山池と博物館の余韻とともにゆるむカフェとして最後に紹介したいのは、「MOD'S COFFEE STAND(モッズ コーヒー スタンド)」です。こちらは、池の南西端から西へすぐの場所にある、ヘアサロン・アイ&エステサロンとの複合施設「GRAND SAGANN -グランサガン-」内のカフェスタンド。地元の人たちを中心に、幅広い年齢層のファンをもつ人気店です。
迎えてくれるのは、オーナーバリスタのYUSEIさん。イギリスでの留学経験で感じた現地のカフェ文化や空気感をもとに、本格派なのにカジュアルなカフェスタンドを2022年に立ち上げました。店名は、1950年代から60年代にイギリスで生まれたヤングカルチャーやライフスタイル「MODS」にちなんでいるそうです。
コーヒーやフレーバーラテ、フローズンなど多彩なドリンクメニューの中から、この日YUSEIさんが勧めてくれたのは紅茶の「アールグレイ」。お店で出す紅茶は、YUSEIさんの地元の広島で江戸時代中期から続く老舗茶舗の茶葉を取り寄せているそうです。そんな紅茶に合わせるのは、やはりスコーン。毎日お店で焼き上げるスコーンに、自家製クロテッドクリームとイチゴジャムを挟んだ「ジャムサンド」と一緒にいただくのがおすすめです。こだわりの紅茶とスコーン。これぞイギリスという王道の組み合わせに、思わず頬が緩んでしまいます。
せっかくならコーヒーも飲んでみたくなり、アイスの「カフェラテ(600円)」もオーダー。こちらのカフェラテ、本格マシーンで淹れたエスプレッソが香る大人の味。飲みながら狭山池と博物館の余韻に浸るには、ぴったりの相棒です。サンドイッチなどのフードと一緒にテイクアウトして、池を眺めながら楽しんでみるのはかがでしょうか。
MOD'S COFFEE STAND
住所:大阪狭山市茱萸木1-8-1 GRAND SAGANN内
TEL:072-365-3882
営業時間:9:00~20:00
定休日:月曜
アクセス:大阪狭山市駅から徒歩約19分
2016年、狭山池築造1400年を記念し帝塚山学院大学と大阪狭山市の官学連携で「狭山池ダムカレー」は誕生しました。
2017年にはレトルト商品も登場し、2021年から一般販売を開始。2024年には、個性豊かなメニューが市内複数店舗で提供され話題に。そして2025年にはご飯を狭山池型に盛れる「築造キット」の販売を開始、自宅で手軽に楽しめるようになりました。狭山池散策のお土産におすすめの一品です。
販売場所:SAYAKAホール(大阪狭山市文化会館)4階レストラン、大阪狭山市商工会、大阪狭山市役所産業にぎわいづくりグループ
博物館で触れた安藤忠雄建築の世界観。その余韻に浸りながらカフェでゆるむアカデミックなひと時は、普段とは少し違う優雅さを感じました。狭山池周辺にある個性的なカフェからお好みをチョイスし、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載情報は施設・店舗の都合により変更する場合がございます。お出かけの際は施設・店舗へご確認の上お出かけいただきますようお願いいたします。