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狭山池と高野街道をぶらりと歩く、歴史さんぽ旅

狭山池と高野街道をぶらりと歩く、歴史さんぽ旅

日本最古のダム式ため池である狭山池をはじめ、街道や鉄道の歴史が交差するまち、大阪狭山市。今回は、名建築家・安藤忠雄が設計した大阪府立狭山池博物館での学びを中心に、狭山池やその周辺に残された歴史の足跡をめぐる旅へでかけます。実際に現地を訪ねて歩いてみると、新たな視点で地域の魅力に出会えるはずです。

目次

狭山池周辺歴史散策MAP

狭山池周辺歴史散策MAP

レトロ感あふれる土木遺産、「南海電鉄煉瓦造暗渠群」をめぐる

狭山池への最寄り駅は、大阪狭山市駅(なんば駅から約25分)ですが、一つ手前の狭山駅からスタートします。狭山駅をスタートしてまず目指すのは、狭山池がある大阪狭山市ならではの歴史遺産「南海電鉄煉瓦造暗渠(あんきょ)群」です。



<南海電鉄煉瓦造暗渠群とは?>
狭山駅と大阪狭山市駅間の築堤には、煉瓦(れんが)造りのトンネルが大小合わせて7つあります。これらは1898(明治31)年の鉄道開通時に、狭山池からの農業用水を通す水路や、人が往来するための通路として造られたそうです。2020年には「土木学会選奨土木遺産」に認定され、今なお現役の水路や通として活用されています。



1号暗渠(MAP①)


1号暗渠


北から順に番号が付けられた暗渠めぐりの最初は、旧名称「第40号拱渠(きょうきょ/こうきょ)」の1号暗渠です。7つのなかでも小規模で、コンパクトな印象。実際に内部を歩いてみると頭がアーチ天井部に近く、規模の小ささを実感できます。


1号暗渠


煉瓦の積み方は、アーチの部分が長手積み、内側の壁と入口上部の縁取り、入口から両側に広がる翼壁(よくへき)がイギリス積みとなっています。イギリス積みとは、木口積みと長手積みを各段交互に積む方法で、煉瓦の使用量が少なくて済むため鉄道でよく使われるそうです。地下には、狭山池から狭山駅東側の太満池を結ぶ水路が通っています。


5号暗渠(MAP②)


5号暗渠


1号暗渠から線路西側の住宅街を南に向かって500mほど歩くと、ひときわ大きな煉瓦アーチが現れます。高野線全線の暗渠群で最大規模を誇る、5号暗渠です。名称は「狭山里道架道橋」で、府道203号富田林狭山線の道路を跨ぐように架かる「橋」として扱われています。アーチの形状は一部を欠いた欠円で、間には迫受石(せりうけいし)という石材をはめるなど、随所に施された工夫も見どころです。


5号暗渠 東側


東側は、煉瓦ではなくコンクリート造り。1937(昭和12)年の複線化で築堤の幅も拡げられ、コンクリートで継ぎ足されたものです。内部から見上げると、はっきりと境目を確認できます。


土木学会選奨土木遺産認定のレリーフ


西側入口脇の壁面には、土木学会選奨土木遺産認定のレリーフが据え付けられています。暗渠群の説明文を読み込めば、地域に根差した貴重な歴史遺産であることが分かるでしょう。


南海電鉄煉瓦造暗渠群


住所:1号暗渠/大阪狭山市池尻中1、5号暗渠/大阪狭山市池尻中2

アクセス:1号暗渠/狭山駅から徒歩約3分、5号暗渠/狭山駅から徒歩約9分

知る人ぞ知る歴史スポット、江戸時代の藩庁跡「狭山藩陣屋跡」へ

狭山藩陣屋跡


5号暗渠を東側に抜け、住宅街の道から府道198号河内長野三原線へ。高野線のガードをくぐってしばらく歩くと、道路沿いの小さな公園に立派な石碑が建っています。次の歴史スポット、「狭山藩陣屋跡(さやまじんやあと」(MAP③)です。


狭山藩陣屋跡看板


狭山藩は、江戸時代初期から幕末まで、小田原北条氏の末裔が現在の大阪狭山市一帯を治めていた小藩です。藩主邸や藩政庁があったこの場所一帯は、陣屋と呼ばれる藩政の中心地。城を持たない小藩の狭山藩にとって、陣屋は城代わりの重要拠点だったのです。現在の府道はかつての大手筋で、両側には藩士の屋敷が建ち並んでいました。


狭山藩陣屋跡


現在は石碑や説明板があるのみで、往時の建物など陣屋の遺構は残されていません。ただ、少し南の陣屋跡に建てられた市立東小学校の校章に北条家の家紋「三つ鱗」が用いられるなど、北条氏による狭山藩政の歴史を今に伝えています。


狭山藩陣屋跡


住所:大阪狭山市狭山3

アクセス:大阪狭山市駅から徒歩約8分

ひっそりたたずむ「さやまはし」で感じた、旧街道の歴史

道


「狭山藩陣屋跡」の公園で小休止した後、再び府道を南下して次を目指します。市立東小学校を過ぎたあたりで府道を離れ古い建物が残る路地を歩くと、緩やかなカーブを描く三叉路が二つ並んで現れました。さらに進んでみると、三叉路の間に小さな橋が架かっています。橋の下は、狭山池から流れる東除川です。


さやまはし


橋のたもとには、「さやまはし」(MAP④)の文字が刻まれた小さな石碑がひっそりと。知らなければ素通りしてしまいそうなこの狭山橋は、高野山へ続く二つの旧街道、中高野街道と下高野街道の結節点に架けられた要衝でした。参詣者や修験者、商人や旅人など多くの人がこの小さな橋を渡って行き交い、信仰や文化、経済をつないでいたのでしょう。


下高野街道の案内板


界隈の静かな住宅街には古い屋敷も残り、昔の面影をしのばせています。橋北側の三叉路を西へ入ると、地面には下高野街道の案内板。旧街道を踏みしめながら、さらに真っすぐ進んだ先が狭山池です。


狭山橋(さやまはし)


住所:大阪狭山市狭山2、3

アクセス:大阪狭山市駅から徒歩約4分

飛鳥時代に堤が築かれた、日本最古のダム式ため池です

狭山池


いよいよ狭山池に到着。北東端の堤防を上がったところには、水上に張り出す形で遊歩道と展望所があり、写真撮影に最適です。


堤防上


堤防上は、草木の美しい風景と整備された歩道が続きます。ユニークなフォルムで立っている取水塔の存在も印象的。大規模なため池ならではの、特徴的な風景です。


水の放出路


池の周囲には、水の放出路などの設備が整備されています。一般的なため池とは、大きく異なるイメージです。

池の歴史を学び、一級の建築を愛でる「大阪府立狭山池博物館」

大阪府立狭山池博物館


そして、今回のメインスポットである「大阪府立狭山池博物館」(MAP⑤)へ。池のすぐ北側で威光と存在感を放つ建物は、大阪が生んだ世界的な建築家・安藤忠雄氏によって設計されました。2001(平成13)年の開館以来、池との一体感や水をイメージした外観が、まちのランドマークとなっています。


堤の断面


館内に入ってまず目に入るのが、巨大な壁のような展示物。これは、池から移築された堤の断面で、高さ約15m、幅約60mにもわたって展示されており、間近で見学できます。飛鳥時代に「敷葉工法」という技術で築かれた狭山池の堤は、改修・増築をくり返しながら現在まで使われ続けてきたそうです。


東樋


池の水を田畑へ送るために埋設して使われていた樋などの設備も、出土品の実物が展示されています。写真は奈良時代の東樋(ひがしひ)と呼ばれる木製の樋で、国の重要文化財に指定されている貴重な歴史遺産です。


大阪狭山市立郷土資料館


館内の一角には、「大阪狭山市立郷土資料館」(MAP⑥)も併設されています。古代から現代への変遷を中心に、石器や武具、文書などの展示資料で大阪狭山市の歴史を紹介。図書コーナーには地史や歴史書のほか、安藤忠雄作品に関する本も並んでいます。


大阪府立狭山池博物館


住所:大阪狭山市池尻中2

TEL:072-367-8891

開館時間:10:00~17:00(入館は~16:30)

定休日:月曜(祝休日の場合は翌日)、年末年始

料金:入館無料

アクセス:大阪狭山市駅から徒歩約10分

※2025年10月14日から2026年8月末日まで臨時休館

ランチもカフェも満足度大。「KINBOSHI PASTA CAFE 大阪狭山店」

「KINBOSHI PASTA CAFE 大阪狭山店」外観


博物館での学びを通じ、改めてその凄さを知った狭山池。反時計回りに西側の堤防を南へ向かってのんびり歩きながら、ちょっとひと息つけるカフェを目指します。池の南西端から府道を西へ進んでたどり着いたのは、白壁の外観が印象的な「キンボシ パスタ カフェ 大阪狭山店」(MAP⑦)。生パスタと季節のケーキが自慢で、幅広い年代の女性を中心とした地元客に愛される人気店です。


パスタランチ


芝生のガーデンを望むテラス席に案内していただき「パスタランチ」をオーダー。7種類から選べるパスタに、スープとリーフサラダがつくランチメニューです。おすすめを聞いて選んだパスタは、「グリルチキンと新ジャガイモのトマトソース」。モチモチ食感の生パスタにソースが絡み、具材のうまみともよくマッチしています。上品な味付けで、あっという間に完食してしまいました。


ケーキ


食後のひとときをさらに楽しむなら、ケーキを選ぶのもおすすめ。店内のショーケースに並んだ色とりどりのケーキの中から、見た目と名前の第一印象で「真夜中の洋梨」を選びました。フォークを入れると、アールグレイの風味を効かせた生クリームとカシスソース、洋梨の味と香りが口いっぱいに広がります。甘さ控えめで、こちらもあっという間に完食です。何とも幸せな、ランチ&カフェタイムとなりました。


KINBOSHI PASTA CAFE 大阪狭山店


住所:大阪狭山市茱萸木1-2702-3

TEL:072-349-4639

営業時間:11:00~21:30(21:00 LO)

定休日:年末年始

アクセス:大阪狭山市駅から徒歩約20分

狭山池ゆかりの「狭山神社」へ参拝し、旅の無事とご縁への感謝を神様にご挨拶

至福のランチ&カフェタイムを過ごしたあとは、身も心も元気に散策を再開。この日最後のスポットへ向け歩を進めます。狭山池から徐々に離れ住宅街を抜けてたどり着いたのは、「狭山神社」(MAP⑧)。創祀(そうし)は狭山池の築造以前と伝わる古社で、平安時代に編さんされた「延喜式」という法典に名前が記されている由緒ある神社です。


「狭山神社」


まずは手水舎で体を清め、鎮守の森に抱かれた御本殿に参拝。主祭神は、天照皇大神と素盞嗚命(すさのおのみこと)の二柱で、臣狭山命(おみさやまのみこと)をはじめ四柱が同じ御本殿に配祀(はいし)されています。宮司さんによると、この臣狭山命は狭山池を神格化してまつられた神だそうです。


「狭山堤神社」


また、境内には同じく式内社で、「狭山堤神社」という池にゆかりがありそうな名前のお社も。狭山池築造の功労者である印色入日子命(いにしきいりひこのみこと)を祭神としてお祀りしているそうで、狭山池の堤に御鎮座していたお社がこの地に移されたということです。
こうした御由緒を知ると、狭山池と地域の歴史についてさらに深掘りして学んでみたくなります。教えてくださった宮司さんにお礼を告げ、今日一日の無事とご縁への感謝を神様にご挨拶し、帰路につくため金剛駅へと向かいました。


狭山神社


住所:大阪狭山市半田1-223

TEL:072-365-0905

拝観時間:境内自由(授与所は8:00~17:00)

定休日:無休

アクセス:金剛駅から徒歩約6分

狭山池をめぐる歴史散歩で感じた、この地ならではの時間の重なり

狭山池


狭山池周辺を歩いてめぐった、歴史の足跡。池そのものはもちろん、土木遺産、街道、まち、古社などを通じて、この土地で紡がれてきた時間の重なりを感じられる旅となりました。時には身近なスポットに潜んでいる意外な歴史を、のんびり歩きながら紐解くまち歩きにでかけてみてはいかがでしょう。

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